トリミングの現場でよくある悩みのひとつが、「怖がりなワンちゃんへの対応」。
サロンデビューの子犬や、保護犬、以前に怖い思いをしたことのある子など、トリミングが苦手なワンちゃんは意外と多いものです。
とくに駆け出しのトリマーさんにとっては、「どう接すればいいの?」「時間がかかりすぎてしまう…」と戸惑うことも多いはず。
そこで今回は、初心者トリマーさんでも実践しやすい“怖がりな子の施術5つのコツ”をご紹介します。
現場で使えるヒントをまとめましたので、ぜひ日々の施術にお役立てください。
1|無理に距離を詰めない「初対面の空気感づくり」
怖がりなワンちゃんは、いきなり触られることそのものに強い警戒心を持っています。
まずは施術に入る前に、「この人は怖くないよ」と感じてもらえる空気づくりが大切です。
コツは“視線と手の動き”
- 目線を合わせすぎない(上から見下ろすと威圧感に)
- 手はワンちゃんの視界に入る位置で、ゆっくりと動かす
- 無理に触ろうとせず、自分から近づいてくるのを待つ姿勢
声のトーンにも注意
人間の「優しい声」が犬にとっても心地よいとは限りません。
高すぎる声は興奮を招くこともあるので、落ち着いた低めのトーンを意識しましょう。
最初の数分で、その日の施術がスムーズになるかどうかが決まることも多いです。
焦らず、まずは信頼関係づくりから始めましょう。
2|施術台に乗せる前の「環境慣らし」がカギ
トリミング台の上は、ワンちゃんにとって非日常の空間。
怖がりな子は特に「高い」「動けない」「知らない場所」の3拍子で不安を強めてしまいます。
台に乗せる前にしておきたいこと
- 店内のにおいをかがせてあげる
- ブラッシング台や床で軽く触れる練習をする
- 店内を少し散歩させてリラックスさせる
ごほうびやおやつも活用を
犬にとって「楽しい体験」や「嬉しい記憶」がある場所は、苦手意識が薄れやすくなります。
施術前後におやつを与えるなど、ポジティブな関連づけを積極的に行ってみましょう。
3|施術は「小さなステップ」で区切るのが鉄則
怖がりな子には、一気に作業を進めるのはNG。
たとえ時短を意識したくても、“少しずつ慣らす”ことが逆に全体の施術時間短縮につながるケースが多いです。
例:爪切りなら
- 足先を触らせてもらう
- 爪を1本だけ軽く触る
- 1本だけカットする
- 落ち着いていたら残りをカット
このように、ステップを細かく区切ることで、ワンちゃん自身も「これは怖くないかも」と感じやすくなります。
途中でパニックになってしまうより、段階的に進めて自信を持たせるほうが、長い目で見て効率的です。
4|「嫌な記憶」を作らないためのリスク回避
怖がりな子への対応では、「苦手な記憶を植え付けない」ことが最重要課題。
もし施術中に強く嫌がってしまったら、一旦中断する勇気もプロとして大切です。
無理に続けることで起きるリスク
- トラウマになって以降の施術ができなくなる
- 噛み癖や逃避行動などが強化される
- 飼い主さんとの信頼関係にも影響が出る
施術を途中で切り上げる判断は、トリマー自身の評価を下げるものではありません。
むしろ「その子にとって一番良い対応をしてくれる信頼できる人」と評価が上がるケースが多いです。
5|飼い主さんと連携することで対応力アップ
怖がりな子の施術を成功させるには、飼い主さんとの情報共有が不可欠です。
その子の性格や過去のトラウマ、苦手な部位など、細かな情報が施術の精度を高めてくれます。
カウンセリングで聞きたいポイント
- これまでのトリミング経験(成功・失敗含めて)
- 普段の生活で怖がるもの(掃除機・ドライヤー・音など)
- 飼い主さんが日常的に行っているお手入れの内容
また、施術後に「今日はここまで頑張れました!」「あと少しでお顔カットも慣れそうです」といったポジティブな報告をすることで、次回への不安も軽減されます。
まとめ|怖がりな子の“味方”になれるトリマーへ
怖がりなワンちゃんに寄り添った施術は、技術だけでなく“心のケア”も求められる繊細なお仕事です。慣れてくるまでは時間がかかることもあるかもしれませんが、一度「この人なら大丈夫!」と思ってもらえたときの信頼感は絶大です。怖がりな子との成功体験は、トリマーとしての自信にもつながります。
「どんな子でも安心して任せられる」そんなトリマーを目指して、日々の現場で実践してみてくださいね!